前回のおさらい
とある病院からの依頼で怪現象を解決するため、潜入捜査をするナイトメアバスターズ。
どうやら病院のどこかに魔物が潜んでいるようだ…。
しかし、バスターズに同行し聞き込みをするエンだったが、耳寄りな情報をつかむことができない。
自らの足で魔物を見つけるべく、病院内を散策。霊安室へと足を運んだ。
するとそこへエンの落とし物を届けに来た女性の目の前に、突如謎の人影が現れるのだった…。
◆潜入~バンの場合~
バン「はっはっは!危うくお前が七不思議になるところだったんだな!」
エン「そうなんです。ベッドの下から出てきたらお姉さん失神してて、僕が起こしたら『キャー!!』とか言ってまた気を失っちゃって。…僕、お化けじゃないのに…。」
バン「ははっ。やっぱり、お前がいると面白い。」
バンの病室は他の入院患者もいる場所で、割と多くの人間に聞き込みをすることができた。
しかし、ハヤトと同じく何の情報も掴めないでいた・・・。
それどころか皆口をそろえて「ここはいい病院」だと訴える・・。
本当にこの病院に“闇”など存在するのか・・・徐々に疑問に思い始めていた・・。
そこへ、霊安室からエンが戻って来たのだった。
バン「それで?見つけた凄いもんってなんなんだよ?」
エン「あ、はい!これなんですけど…。」
そういうとエンは、霊安室で発見したあるものをバンに差し出した。
バン「こ、これはっ!・・・遺書か!?」
差し出された紙には、それと思わしき文章が書き記されていた。
『私はもうこれ以上、仕打ちや口止めには耐えられません。確かに周りの皆さんに比べ仕事の出来ない私です。咎められて当然かと思います。…しかし、連日の仕打ちは、私にはもはや苦痛でしかないのです。いや、こう思っているのは私だけではないはずです。…私は今日、自らこの命を絶ちます。しかし、いつの日か勇気ある人がこの遺書を見つけ、この病院の暗闇を晴らしてくれることを祈っています…。それではみなさん、さようなら。』
エン「やっぱり…そうだよね?」
バン「ああ、エン!これはお手柄だぞ!!やっぱりこの病院には闇がある・・・。」
バンがそう言ったとき部屋の扉が開かれ、回診の看護師がやって来た。
「都合がいい」と、バンは看護師にこの遺書について尋ねることにした…。
「この病院で怪奇現象はないか…?」幾度となく聞いてきたこの質問をやめ、
バンは手がかりになりそうなワードのみを抽出し、小声で尋ねてみたのである。
看護師「どうです?お体の具合は…」
バン 「ええ、おかげさまで…ところで、ちょっとお尋ねしますが、“口止め”という言葉に、何か感じることはありませんか…?」
看護師「!!」
すると看護師は、明らかに今までと違った反応を見せたではないか。
バン 「やっぱり…何か思い当たることがあるんですね…?」
看護師「あ…あなた…もしかして警察の方ですか?」
バン 「ん?どうしてそんな事を?」
看護師「いえ、警察の方でしたら…都合がよいのですが…。」
バン 「そうですか…ええ、私は警察の者です。ちょっとこれを見ていただけますか…?」
看護師「!!」
バンはとうとう看護師にあの“遺書”を突き付けた・・・。
バン 「あなたはこの遺書に書かれている…勇気ある者…ですか?」
看護師「…。」
バン 「もしそうならば、私たちが必ず、この病院の闇を晴らして見せますよ?いかがです…?」
看護師「・・・・分かりました・・・・すべてお話しします・・・。」
エン 「バンさん!!やりましたね!!」
看護師「だから・・どうか私たちを・・・」
『助けてください・・・。』
バン 「ええ、もちろんです!」
こうして看護師は、この病院の“裏の顔”を2人に語って聞かせたのだった・・。
◆ハヤトの病室
エン 「ハヤトさんやりました!」
バン 「この病院の謎!分かったぞ!」
そう言ってハヤトの病室に駆け込んだ2人は驚いた!!
ハヤト「・・・・頼む・・・何も見なかったことにしてくれ・・・。」
そこには、全身の包帯にキスマークを付けられ、横たわるハヤトがいた・・・。
・・
・・・・
・・・・・
◆数時間後 病院 待合室
夜も更けた頃…。
消灯した病院の待合室に、院長が訪れていた…。
ナイトメアバスターズから呼び出されたのだ。
院長 「なんだ…?呼び出しておいて居ないではないか…。」
しかし、そこに3人の姿はなかった。
院長 「おかしい…。」
院長が首を傾げたその時だった!
突然その眼前に、鋭い光沢を放つ何かが降ってきた!
院長 「!?」
それは、一本の手術用のメスだった。
院長 「またか…おい!居るんだろ!?依頼は片付いていないではないか!!」
院長がそう叫んだその時!
病院内にけたたましい叫び声が木霊した!
院長 「なっ!何なんだ!?これは!!」
そう。院長の目の前に、とうとう魔物がその姿を現したのだ!!
雄叫びを上げ院長を睨み付けるそれは、体中から注射器をはやし、巨大なメスを片手に握りしめたナースのような姿をしている・・・。
院長 「な、なな、何なんだこの怪物は!?こいつが原因だったのか!?」
院長がその言葉を発するのもつかの間、とうとう魔物は院長目掛けて、メスを振り回した!!
院長 「うわぁっつ!!」
間一髪それを避けると、院長はその場を逃げようと、震える足取りで駆け出した!!
院長 「助けて!!助けてくれ!!」
そう訴えながら走ると、目の前にナイトメアバスターズが立っていた。
院長 「お、お前たち!やはりいたのか!!何やってる!はやく何とかしなさい!!」
その声に促されるようにエンは身構えると、ハヤトたちに向かって口を開いた。
エン 「よし!!これでいよいよ魔物と戦えますね!!」
院長 「!?」
なんとバスターズは院長を囮に、魔物を呼び寄せたのである!!
エン 「よし!いくぞ!!」
意気込むエン!
ところがだった…。
ハヤト「・・・・・・・。」
ハヤトはなぜか無言でその場に佇んでいる。
エン 「ちょっとハヤトさん!どうしたんです!?早く倒さないと!!」
ハヤト「・・・・・・・・。」
しかし相変わらずハヤト、そしてバンまでもがただただ無言で佇んでいるではないか!!
エン 「ちょっと!どうしちゃったんですか2人とも!!」
エンが叫んだその時だった!!
魔物は再び雄たけびを上げると、院長めがけて襲い掛かった!
院長 「うわぁっ!!!」
そして、ついに魔物は院長をその手にとらえると、ギリギリと鈍い音を立てながらその体を握りしめ始めた…!
院長 「な…なぜだ…なぜ私がこんな目に…!?お前たちも…何をやっている早く…早く助けてくれ…。」
必死に助けを求める院長。
バスターズ「・・・・・・。」
しかし、ハヤトもバンも、ただその光景を見つめるばかりで何もしようとしない・・。
エン 「ぁあ!もういいです!僕が助けます!!」
しびれを切らしたエンは、2人に向かって声を荒げると、いよいよ魔物に挑もうと地面を蹴った!
しかしハヤトが突然その肩を掴み、エンの動きを静止した!
エン 「!?」
ハヤト「エン…お前は黙って見てろ…。」
エン 「…え?」
目の前で一人の人間が、今まさに魔物によって殺されようとしている!!
それなのに何もしない!それどころか、自分の行動を抑制される!
エンにはハヤト達の行動が全く理解できなかった!
・・・ところが・・・
院長 「どうしたんだお前たち!!私はお前たちに“この病院の闇を祓え”と言ったはず!」
ハヤト「ああ、その通りだ。」
院長 「それなら・・・早く何とかしてくれ・・・!!」
ハヤト「ああ、だからやってるじゃないか。」
院長 「何ィ!?」
ハヤト「この病院の闇は・・・」
『・・・アンタだろ・・・。』
院長 「!?何を言っている??」
ハヤト「アンタ・・・この病院でミスをした人間を、必要以上に叱りつけていたそうじゃないか…。」
院長 「!?」
バン 「そして、アンタのパワハラに耐えかね、この病院で自殺した看護師がいるんだろ…。」
院長 「!?・・・誰からそれを・・・(あれほど口止めしていたのに・・・。)」
ハヤト「なんだ・・?それを聞いて、そいつをまた咎めるつもりか?」
院長 「くっ・・・。しかし、私の指導は正当なものだ!!命を扱う現場で、ミスなど許されないからな!!」
ハヤト「・・・確かに・・それはその通りだ・・・。」
院長 「そうだろ!!・・・さぁ!・・早く助けてくれ!!」
バン 「しかし、人間誰しもミスはある…。ひとたびの失態を必要以上に、きつい言葉で叱り罵り…それが精神的な負荷となって辞めて行った人間が大勢いると聞きました…。」
ハヤト「そして残った看護師たちも、アンタのパワハラに怯えるあまり、頻繁にミスするようになったとか…。」
院長 「ふ…ふざけるな…!私の指導に屈するような人間は、医師としてこの病院に勤める権利などないのだ!!」
ハヤト「おいアンタ…命を…命を何だと思ってる!?」
院長 「それは…尊いものだ!!決まっている!!」
ハヤト「ふん…偽善者め…。自分の保身のために一人の人間の死を口止めして・・・。アンタの意に沿わない奴は死んでもいいって言うのか!」
バン 「実際、それが苦痛で死者が出ている・・・よほどキツかったんだろうな・・・。」
ハヤト「ああ。そしてこの魔物はその看護師のなれの果てだ・・!!」
院長 「そう…なのか…。」
ハヤト「命の重さは皆平等だ…。それでもこの看護師が死んだのは当然と言い張るのなら…。それこそ命の現場を扱う長としてふさわしいとは言えない!!」
院長 「ぐっ…!」
院長を握りしめる魔物の握力が増してきた…。
院長 「うっ…おお…!!」
エン 「も、もういいです!!そろそろ助けましょう!!」
院長 「た・・のむ・・・たすけ・・て・・」
ハヤト「いいや…。アンタが罪を認めないのなら…これは当然の報いだな…。」
院長 「そん…な…。私の…指導は…正当…だ…。」
ハヤト「いいや、アンタは間違ってる…。」
院長 「!?」
ハヤト「ひとたびの過ちなんて誰にでもある・・・。アンタにとっては、部下の看護師が死んだこと…か?」
院長 「くっ…。」
ハヤト「まぁ、アンタのミスは重大なものだが・・・本当に大切なことは、ミスを咎めるめる事じゃない・・・。」
院長 「な…に…?」
ハヤト「本当に大切なことは・・・」
『同じ過ちを繰り返させないことだ!!』
院長 「!!」
ハヤト「しかしアンタは今でも同じようなパワハラ繰り返し、口止めし、反省すらしていない…!!」
院長 「…。」
ハヤト「だから…悪いが助ける気はない!!」
エン 「!?」
院長 「そん…な。」
ハヤト「どうなんだ?…これでもアンタは同じことを繰り返すのか…?」
院長の意識が薄らいできた…。
その時だった…
院長 「彩子…すまない…あやこ…」
魔物 『…』
院長 「彩子…私が…悪かった…。」
断末魔の苦しみのなか…院長は魔物の手の中で頭を下げ始めた。
院長「彩子…私は…私は考えを改める!!もう二度と、必要以上に叱ることはしない!!…私が…愚かだった…」
『罪を認める・・・・。』
その時だった!
魔物が院長を手放した!!
ハヤト 「今だっ!!」
そう言うとハヤトはその一瞬の隙を突き、セルガイアのチカラで魔物を撃ち滅ぼしすのだった…。
・・
・・・・
・・・・・・
◆数日後 陰陽庵
その後院長は記者会見を開き、看護師の死をひた隠しにしてきたことを認め辞任した…。
そして、そんなテレビの報道を見ながらエンたちは語り合っていた。
エン 「…こういうこともあるんですね…。」
バン 「あぁ。別に死んだ人間が“悪”ってわけじゃないからな…。」
ハヤト「そうだ…。そしてこれこそ、本当の意味で“魔物を倒す”ってことだ。お前には百万年早い。」
エン 「むぅぅ…。」
その言葉に不貞腐れるエンだったが、バスターズへの加入をそうやすやすとあきらめる気などなく、眉をひそめながら一言「勉強になりました。」と答えた…。
ハヤト「ところで依頼と言えば…最近店の電話全然鳴らないよな…。」
バン 「そう言えば…。」
そう言いながら、ハヤトが電話機に近づくと、ふとあることに気が付き唸りだした。
ハヤト「………エンんんん………!」
エン 「え!?どうしたの!?」
ハヤト「電話線…」
「付いてねぇじゃねーかーーーーーーーーーー!!!!」
エン 「ああっ!!電話機ってコンセントだけじゃダメなんですか!?」
ハヤト「お前はホントに…ゆるさねぇぇぇぇええええ!!!!」
エン 「えぇぇええ!?ひとたびの失態は許されるって言ったのにーーーーーー!!!!』
ハヤト「お前はやらかしは1度じゃねぇだろーーーーー!!!!」
そう叫ぶハヤトだが、そもそも電話機を壊した張本人である。
つづく!