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新世紀陰陽伝セルガイア

第八話~悪夢の退治者~

今宵・・・
少女は、自宅の風呂場で石鹸を握りしめていた・・・。
普段であればそれを手の中で泡立て、髪や体に擦り付けるはずだろう・・。
しかし、この日の彼女はそうしなかった。
その石鹸を自らの爪で引っ掻き、ある“文字”を刻み始めたのである・・・。

なぜこのような行動をとるのか・・・。
それはこの日の昼、彼女の通う高校で、とある噂話を耳にしたからであった―――。

女子A 「ねぇねぇ覚えてる?数か月前にあった女子高生が殺された事件。」
女子B 「あぁ!風呂場で殺されて、妹さんが容疑者で捕まったってやつでしょ?」
女子A 「そうそう。」
女子C 「でも、妹さんは結局無罪判決受けて、真犯人は見つかってないんでしょ?」
女子A 「そうそう!」
女子B 「で?それがどうしたの?」
女子A 「いや実はね・・その妹さん、結局周りから殺人犯扱いされたのが辛くて、最近自殺しちゃったんだって・・。」
全員  「うそー!」
女子A 「でね、それからちょっとした都市伝説が流行り始めたんだけど・・・みんな知ってる?」
全員  「・・・知らな~い。」
女子C 「え?どんなのどんなの?」
女子A 「実はね・・・その自殺した妹さん、“サヨリ”ちゃんていうんだけど・・・あることをするとその“サヨリ”ちゃんの霊に会えるんだって・・・。」
女子B 「え…?」
女子C 「・・・それ・・ガチ…?どうやるの?」
女子A 「うん、あのね・・・。まず夜風呂場で、石鹸に爪で“サヨ”って書くんだって。」
全員  「うん、うん。」
女子A 「で、それからその石鹸の泡で髪の毛を洗うんだって。」
全員  「それでそれで?」
女子A 「で、髪の毛を洗いながら目を瞑ってると、『私じゃない・・・』『私じゃない・・・』って声が聞こえてきて・・・。」
全員  「・・・・・・・」
女子A 「目を開けると鏡に・・・血に染まって白目をむいたサヨリちゃんの霊が映るんだって!!」
全員  「キャーーーーーーー!!!」
女子B 「怖ぁ~・・・。」
女子A 「でしょ~?」
女子B 「うん、超怖い・・・。」
女子C 「ホントなのそれ~?」
女子A 「まぁあくまで噂なんだけどね。でも今流行ってるんだって・・。」
女子B 「たしかに、風呂場で頭洗ってるときって怖いからね~。」
女子A 「だよね~。」
女子C 「う~ん・・信じらんないな~・・あたし、今日帰ったらやってみようかな・・?」
女子B 「え~・・やめときなよ~・・。」
女子A 「でも、ちょっと試してみたい気もするよね。」
女子C 「・・・だよね・・・」

・・・
・・・・・
・・・・・・

こうしてこの日の夜、少女は石鹸に“サヨ”という文字を刻んだのだ・・。

少女C「うそ・・だよね・・こんなの…」

彼女は石鹸からあふれ出す泡で髪の毛を洗い始めた。
ごしごしと、長く伸ばした黒髪を丁寧に洗っていく。
その時が来るのを待ちわびながら・・・。

少女C「・・・・・・・。」

しかし、一向にそれは現れない。

少女C「やっぱり・・ただの都市伝説か・・・。」

怖い気持ちはあったのだが、期待を裏切られ、ガッカリしながら髪を洗い流そうとした。
・・・その時だった・・・。

『・・・じゃない・・』

女子C 「・・・え?」

『・・・しじゃない・・』

女子C 「ちょっと・・うそ・・・でしょ・・?」

『・・私・・・じゃない・・・』

女子C 「・・・・・・・。」

本当に噂通りの“声”が聞こえて来たではないか・・。

女子C「ちょっと・・・やめてよ~・・・。」

そう言いながらも、“怖いもの見たさ”というヤツだろう・・・
彼女は意を決して、目の前の鏡に目をやった・・・

すると突然!

『私はやってない!!!!』

鏡に現れたそれは、全身ぐっしょりと血に染まり、白目をむいてこちらを睨み付けていた・・・・。

第八話~悪夢の退治者

◆数ヶ月前
男 「あ~あ・・またダメか・・・。」

その男は小説家を目指し、物語を考えては出版社に投稿する日々を送っていた・・。

男 「くっそ・・どうすりゃデビューできるんだ・・・。」

男の名は海道小吉。
「自分には物語を書く才能がある!」そう言い張り早数年・・。
幾度となく自らの小説を売り込んでいるが、さっぱり売れる気配がない。
たしかに、自分の思い通りに物語が書ける今の現状には満足していたのだが、やはり売れなければ意味がない・・・。
“大吉”にはなれない“小吉”。
この頃はそんな自分の名前にすら恨みを覚え始めていた・・・。

小吉 「あ~ぁ・・気晴らしにテレビでも見るか・・・。」

小吉はダルそうにテレビのリモコンをいじると、ニュース番組にチャンネルを合わせた。

『次のニュースです。昨夜未明、高校生の中野ミヨリさん(18)が何者かにより自宅の風呂場で殺害され、死体で発見されました。』

小吉 「・・・・・。またこんな事件か・・・。」

『死因は刃物で刺されたことによる失血死。しかし、凶器の刃物から指紋は検出されなかったとのことです。』

小吉は、聞き飽きた暗いニュースにため息を漏らし、チャンネルを回そうとした・・。
ところがその先の内容を、小吉は食い入るように見入ったのだ。

『容疑者として逮捕されたのは、ミヨリさんの双子の妹、サヨリさん(18)。現場の石鹸に残された“サヨ”というダイイングメッセージが逮捕の決め手となったようです・・。』

小吉 「ダイイングメッセージか・・・まるで推理小説みたいだな・・・。」

小吉はそう呟いた・・・すると・・

小吉 「ん?・・・待てよ・・・しょうせつ・・・。これ・・・面白いぞ!!!」

小吉の脳裏に突然インスピレーションが湧き、「このニュースの内容を物語にしてしまおう」と思い立ったのである!

小吉「よし・・・!よし!いいぞ!この話!絶対に面白い!!!」

その時の小吉は不思議なほどに頭が冴え、瞬く間にそのニュースの内容を物語に書き換えるイメージが湧いてきたのだった!!

小吉 「さっそく・・書いてみよう!!」

小吉はパソコンを起動すると、カタカタとキーボードをタイプし、原稿を書きだした。
そして、文章が進むにつれてますます男は興奮した。

小吉 「面白い!面白いぞこれ!!これなら絶対にいける!!」

これであれば、自分は小説家としてデビューできる!
もはやそれを確信してもいいほどの内容であった。

ところがだった・・・。
物語の終盤に差し掛かったころ、小吉はある事を思いついたのである・・・。

小吉「待てよ・・・これ、普通に出版社に持ち込むのはつまらないな・・・。そもそもこれは物語じゃなくて、現実のニュースだった・・・・なら・・・ははっ・・俺の物語も・・へへへ・・・現実のものにしてやる・・・・。はははは。」

そういうと小吉はその小説を、ダイイングメッセージの内容に特化した“新たな文章”として書き換えた。

『石鹸に“サヨ”と書き込み髪を洗うと、サヨリの霊が現れる。そして、それを見た人間は殺されてしまう・・・。』

そんな内容であった。
もちろんこの時サヨリは死んでなどいなかったのだが・・・。

小吉 「はは・・ははは・・これも・・面白いぞ・・・ははは!」

そういうと小吉は、その文章を自分のブログにアップしたのだった・・・。

◆数ヶ月後
少女A 「ちょっと!うそでしょ!?Cちゃん死んじゃったって!?」
少女B 「ホントだよ!!昨日の夜!!風呂場で心臓麻痺だって!!」
少女A 「そんな!!」
少女B 「あのね、Cちゃん・・・昨日ホントに“あれ”試してみたみたい・・。」
少女A 「・・・え?」
少女B 「風呂場にね・・“サヨ”って書かれた石鹸があったんだって・・・。」
少女A 「うそ・・でしょ・・・!?」

そう、小吉がブログに投稿したあの“都市伝説”は瞬く間の内にに広まっていた。
始めのうちは、あくまで都市伝説であったそれ。
しかし、事件後現実に、世間の誹謗中傷に耐えかねたサヨリが自殺してしまった事を皮切りに、その内容も現実のものとなってしまっていた・・・。

少女A 「うそ・・・ありえない!」
少女B 「でも・・実際に!!」
少女A 「あたし・・やってみる。」
少女B 「え!?」
少女A 「あたしもCみたいにやってみる!!」
少女B 「ちょっとやめなよ!!」
少女A 「確かめなきゃ気が済まないよ!だって!・・・わたしがあんな話しなかったら・・・。」
少女B 「・・・!!・・・」
少女A 「違う・・・私のせいじゃないって・・証明してやる!」

その晩・・少女Aは死んだ。

◆小吉の家
小吉「はは・・ブログのアクセス数・・凄いことになってる・・・。」

確かにあのブログをアップしてから、小吉のサイトにはアクセスが殺到していた。
そして・・・

TV 『さあ!蓮の葉テレビの人気コーナー!“街角超常現象”のコーナーがやってまいりました!!』
『みなさん・・今巷で噂になっている、“サヨの石鹸”という都市伝説、存知でしょうか?』

それはテレビでも特番が組まれるほどにもなっていた。

小吉 「そうだ・・いいぞ・・・もっと広まれ・・もっとだ!!」

ところがこの日・・小吉は驚愕することになる。
そのテレビから、衝撃の内容が響き渡ったのだ!

TV 『実は最近、その都市伝説を実行した人間が命を落としているという噂があるんです・・。』

小吉 「えっつ!?」

TV『最近原因不明の心臓麻痺で死亡した人間が、全員風呂場で、しかも石鹸に“サヨ”と書き残して死亡しているという話です。』

小吉 「何だって!!??」

TV『ちょっと待ってください。冗談でしょそんなの・・』
『私もそう思うんですがね・・・実際に死んだ人間が何人もいるそうなんです・・。』
『なら・・・集団心理の影響でしょうか・・・?』
『実際のところは分かりませんが、事実、あの風呂場での女子高生殺害事件が元になって広まった都市伝説ですからね・・・。こういう事が起きるのもうなずけるんじゃないでしょうか・・・?』
『ちょっと・・やめてくださいよ・・。』

小吉 「うそだろ!?確かに俺はあの話を「現実のものにしてやる」そう言った・・。でも・・あれはまぎれもなくウソ偽りだ!!こんなこと・・ある筈がない!!」

小吉はテレビからあふれ出す声に耳を疑った。
しかし、どうやらそれはやはり現実の出来事だったようで・・・。
それから数日間“風呂場での心臓麻痺での死者”は増える一方だった・・・。

小吉 「くそっ・・・どうして俺の話で人が死ななきゃならない!!うそだ!ありえない!!
    そうだ・・・・、確かめてやる!俺も・・・やってやる!!!」
そういうと小吉は、風呂場へと駆け出した。

小吉 「はぁ・・はぁ・・・」

小吉は震えていた。
現実ではないと自分に言い聞かせながらも、連日のニュースを突き付けられた身。
ましてその噂を広めた張本人である・・・。
内容をくまなく知っている小吉は、恐怖しながらも、一枚・・一枚と、
服を脱ぎ捨てていった。

小吉 「うそだ!絶対にウソだ!!」

そう言いながら小吉は風呂場の椅子に腰かけると、とうとう石鹸を手に取った。

小吉 「よし・・・やるぞ・・・!!」

そういうと小吉は爪を立て、その石鹸に“サヨ”と書き込んだ。

小吉 「ふぅ~~っ。」

小吉は恐怖を紛らわそうと深く息を吐き、石鹸を一気に泡立てると、自らの髪の毛に擦り付けた。

小吉 「来るなよ~・・・来るなよ~・・」

そう言いながらガリガリと頭をかく小吉・・・・。

すると・・・・

『・・・じゃない・・・』

小吉 「・・・!!」

『・・・しじゃない・・・』

小吉 「マジかよ・・・!?」
声が聞こえ始めたではないか!!

『私じゃない・・・・』

小吉 「(きたぁぁあ・・・・!)」

『・・・私じゃない』

小吉 「(帰ってくれ・・・頼む・・・帰ってくれ!!)」

『・・・私じゃない・・・』

小吉 「(頼む!!俺が悪かった!悪かったから!!)」

そういうと小吉は、ふと目の前の鏡に目をやった・・・。
すると!!

『私はやってない!!!!』

小吉 「ぎぃやぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

とうとうサヨリの霊が現れた!!!

小吉 「ごめんなさいごめんなさい!!まだ死にたくない!死にたくない!!」

小吉は必死に訴えていた!

やはり、全身が血に染まり白目をむいているそれは、鏡にだけ映しだされていた。
そう、普通の人間には直接幽霊を見ることは出来ないからである。

『・・私じゃない・・私じゃない・・』

なおも訴え続けるサヨリの霊・・・。
小吉も必死になって訴えた!!

小吉 「(もうしませんもうしません!!だから命だけは!命だけは助けてください!!)」

ところが

キシャァァァアアア!!

サヨリは恐ろしい形相で小吉を睨み付けた!
すると・・

ドクン・・・

小吉 「・・・うっ!!・・」

小吉の鼓動のリズムが狂い始めた。

ドクン・・・

小吉 「あぁ・・・あ・・」

ドクン・・・

小吉 「く・・そ・・・死ぬ・・・!!」

キシャァァァアアア!!

小吉 「うわぁぁぁあああああ!!!!!!!」

その時だった!!

『そこまでだっ!!!』

小吉 「っ!!??」

風呂場の扉が開かれ、そこには一人の人物が立っていた!

小吉 「あな・・たは・・・?」

ナイトメアバスターズのハヤトが駆け付けたのだった!!

ハヤト「俺の事はどうだっていい!それより!・・・」

『サヨリちゃん!!』

サヨリ『!?』

サヨリは驚愕した、死んでからこれまで、自分に語りかけてきたものなどいなかったからである。

ハヤト「サヨリちゃん・・・こんな事もう止めるんだ。」
サヨリ『!?』
ハヤト「俺は君の事・・全部知ってるんだ!」
サヨリ『私じゃない・・・私じゃない!!』
小吉 「な!?何なんですかあなたは!?」
ハヤト「いいから黙って見てろ!!」
小吉 「!!」
ハヤト「そうだ、サヨリちゃん。お姉さんを殺したのは君じゃない!!」
サヨリ『お・・お前に・・何が分かる・・・』
ハヤト「分かるんだよ!やったのは君じゃない!!だから君は、必死にそれを
訴えたかったんだろ!?」
サヨリ『!?』
ハヤト「でも・・こんなやり方間違ってる!!もう、終わりにするんだ!このままだと
君は魔物になって!永遠に成仏できなくなるんだぞ!!」
サヨリ『私は・・・わたしわぁああぁ・・・・』

その時サヨリはかつての事を思い出していた・・・。

◆数ヶ月前 サヨリの家
ミヨリ「サヨ~?トモヒロくんまだいるの~?」
サヨリ「あ!お姉ちゃんだ!」

サヨリはその日、両親の留守をいいことに、彼氏であるトモヒロと一晩を過ごそうと、自宅に招き入れていた。
しばらく部屋でいちゃついていたのだが・・
夜も更けたころに姉であるミヨリの声がしたのである。

サヨリ「ね~!今日泊まらせてあげてよ~!!」
ミヨリ「だ~め!!許さないわよ!」
サヨリ「ちぇ~。お姉ちゃん彼氏いないからって嫉妬してるんでしょ!」
ミヨリ「も~!バカなこと言ってないで早く帰らせな~。あたし先にお風呂入ってるからその間にね。」

ミヨリはサヨリの双子の姉である。
その容姿は酷似しており、度々お互いを間違えられることがある。
明らかな違いは2つ。
姉は高校に通い、進学できなかったサヨリはとび職として働いている事。
そして、サヨリには彼氏がいるという事である。

トモヒロ「サヨ・・今日はもう帰るよ・・。」
サヨリ 「え~?そんなこと言わないで、泊まってってよ。」
トモヒロ「いやいや、もう遅いし、それに・・・ミヨリとの約束もあるしな!」
サヨリ 「え?なに・・お姉ちゃんとの約束って・・。」
トモヒロ「いや・・お前とずっと一緒に居たいからな・・・約束は守らないと。」
サヨリ 「え?どういうこと?」
トモヒロ「ま、また今度ゆっくり話すよ!じゃあなっ!」
サヨリ 「ちょっとトモ~。」

そう言うとトモヒロは、サヨリにキスして部屋を出て行った・・。
サヨリ 「あ~あ・・・今日はチャンスだと思ったのにな・・。」

落胆するサヨリはベッドに寝転ぶと、ぼんやりと天井を眺めた・・・。
するとその時だった!!

キャーーーーーーーっつ!!!

サヨリ「お姉ちゃん!?」

姉の叫び声がコダマした!どうやら風呂場からのようである!
サヨリはベッドから跳ね起きると、急いで階段を駆け下りた!

風呂場のドアを開けるとそこには!
血にまみれ倒れたミヨリと・・・
一人の人物が立っていた・・・。

???「やった・・・とうとうやったわ・・」
サヨリ「!!あなた・・・!?」
???「!?ど・・・どうして・・ミヨリ??」
サヨリ「!?」
???「何で!?どうしてミヨリが2人いるの・・・???」

???「あぁぁぁぁあああああああああああああああっつ!!!!」
サヨリ「いっ!?」

その人物は突然叫び声をあげると、サヨリにぶつかり逃げ去って行った。

サヨリ「ちょっと・・・お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!!」

ミヨリは死んでいた。サヨリはすぐさま警察に電話を掛けたのだったが・・・。
第一発見者である彼女が真っ先に疑われた。
サヨリは真犯人の存在を訴えたが、その場では信じてもらうことができなかった。
なぜなら・・・。
警官 「君・・サヨリちゃんて言うんだろ?」
サヨリ「は・・はい・・」
警官 「じゃあ・・これは何なんのかな?」
サヨリ「こ!これって!・・・・お姉ちゃん・・・。」

姉の手に、“サヨ”と書かれた石鹸が握りしめられていたからである・・・。

しかしサヨリには姉を殺す動機がない!
逮捕後にその事も必死で訴えたのであったが・・・。

警察 「君・・あれだろ・・お姉さんに奪われて、嫉妬してたんだろ?」
サヨリ「そ・・そんな・・お姉ちゃんに彼氏はいません!それにトモくんは私の彼氏です!」
警察 「何を言ってる・・・君のお姉さんとその・・トモくん?が一緒にいるところを
たくさんの人が目撃してるんだよ・・。」
サヨリ「そ、それは!きっと私と見間違えたんです!だってお姉ちゃんと私、
瓜二つだから!!」
警察 「確かに・・・驚くほど似ているね・・・しかし・・君は制服を着たことがあるか?」
サヨリ「・・・??」
警察 「そのトモ君は、“制服を着た”君と一緒にいたらしいが・・・はたして誰だろうね?」
サヨリ「そんな・・・・お姉ちゃん・・・」

ミヨリは、どうやらサヨリに内緒でトモヒロと付き合っていたようである。
しかも石鹸に残したあのダイイングメッセージである。
サヨリは裏切られた気持だった。
いつも優しくて暖かくて・・頭もよくて・・
そんなミヨリを彼女は尊敬すらしていた。
それなのに・・・・
サヨリの目の前が真っ暗になった・・・。

・・・暫くたって
サヨリは釈放された。

しかし、社会から“殺人者”のレッテルを張られ、トモヒロまでもがサヨリの元から離れていき・・・
サヨリはとうとう孤独のまま、自らその命を絶ったのである・・・。
じぶんを信じなかった社会を・・そして姉のミヨリに恨みを残したまま・・・。

◆小吉の家
サヨリ『そうだ・・・私じゃない・・私じゃないんだ!!あのときあそこにもう
一人いたんだ!!』
ハヤト「・・・・ああ・・。」
サヨリ『それなのに・・それなのに誰も信じようとしなかった!!ミヨリにも裏切られ!トモヒロにも裏切られ!!わたしは一人になった!!こんな世の中間違ってる!!だから私が殺してやるんだ!!信じない奴は全員・・・』

『殺してやる!!!!!』

ハヤト「うわぁっつ!!」
小吉 「うわっつ!!」

サヨリはとうとうハヤトに向かって襲い掛かって来た!
そして小吉にもその光景が鏡越しに見えていた。

小吉 「ちょっと!!何とかしてくださいよ!!さっき全部知ってるっていってましたよね!?」
ハヤト「ああ・・そうだな・・。」
小吉 「ちょっと、何落ち着いてんですか!?早く何とか!!」
ハヤト「黙ってろ!!」
小吉 「!!」

ハヤト 「サヨリちゃん、さっきも言った通り、俺は全部知っている。」
サヨリ 『なん・・だと・・。』
ハヤト 「それは、“君の知らい事”も、だ。」
サヨリ 『・・??・・』
ハヤト 「君のお姉さんはな・・・石鹸に・・・本当はこう書きたかったんだよ・・・。」

するとハヤトは小吉から石鹸を奪うと、そこに見知らぬ人物の名前を刻んだのである。

サヨリ 『・・・これ・・は・・・?』
ハヤト 「君のお姉さんを殺したのは・・こいつだよ・・。」
サヨリ 『・・・・!!』

サヨリはうろたえた。
しかし、その名前に見覚えはない・・・。
彼女は再び形相を代えた!

サヨリ『そ・・それがわかったからって今更たんだって言うんだ!!殺してやる・・・』
『殺してやるーーー!!!!!』
キシャーーーーッツ!!!

ハヤト「うわぁっつ!!」
小吉 「うわっつ!!」
ハヤト「やめろ!!もう止めるんだ!!魔物になるぞ!!!」
サヨリ『それでいい!!それでいい!!!』

キシャーーーーッツ!!!

サヨリが再び二人に襲い掛かろうとしたその時だった!

プルルルル・・・プルルルルル・・・

ハヤトの携帯が鳴った!!

ハヤト「バン!!遅いぞ!!」
バン 「悪いわるい!道が混んでてさ・・」
ハヤト「そんなのんきな事言ってる場合か!?こっちは最悪の状況だぞ!!」
バン 「すまんすまん!まあ落ち着け!」
ハヤト「・・ところで、彼女は見つかったのか?」
バン 「ああ、今目の前にいる。この話をしたら彼女、自首するってよ。」
ハヤト「そうか・・よかった!!」
バン 「ハヤト・・ハンズフリーに切り替えろ。彼女が、サヨリちゃんと話したいってよ。」
ハヤト「分かった・・・。」

そう言うとハヤトは、携帯をハンズフリーに切り替えると、サヨリの前に差し出した。

「あの・・・サヨリ・・・さんですか・・・?」
『こ・・・この声は・・・あの時の!!』
「あ!あの!・・・わたしヤマイって言います!!あなたのお姉さんを殺したのは
私です!!ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!これから自首します・・・。」
『・・・・・・。』

ヤマイさんはかつて、同じ高校に通うクラスメイトのミヨリに、
一方的な嫉妬心を抱いていた。
根暗な自分とは違い華やかにふるまうミヨリ・・・。
容姿端麗、成績優秀で男子からも人気の高いミヨリ・・・。
ヤマイの嫉妬心はいつしか敵意に変わって行った・・・。

そんなある日、ミヨリがある男と並んで歩く姿を目撃する。
それは、ヤマイが密かに想いを寄せるトモヒロだった。

・・・ますます嫉妬した・・・。

それから数日後、ヤマイは友達と会話するミヨリの話に聞き耳を立てていた。

ミヨリ「あのさ・・今日うちの両親旅行でいないんだ~。
寂しいからだれか遊びに来ない?」
 「あ~ごめん!あたし今日用事あるんだ。」
 「ごめんあたしもなんだ~。」
ミヨリ「そっかぁ~・・・。」
   「でもさミヨリ・・いいチャンスじゃない?彼氏・・家に呼んじゃったら?」
ミヨリ「いやいや、私彼氏いないから・・・。」
   「うっそ~こんなにカワイイのに?」
   「そうだよ!ぜったいウソ!ミヨリをほっとく男子の気がしれないね。」
ミヨリ「ははっ。ありがと。でも、ほんとにいないんだ私・・・。」
ヤマイ 「(・・・・何よいい子ぶっちゃって!私は知ってるんだからね!
アンタがトモヒロ先輩と付き合ってるの!!あ~許せない!!許せない!!)」

そしてヤマイはこの日の夜、ミヨリを殺したのであった・・・。


ハヤト「サヨリちゃん・・これが真実だ。お姉さんを殺したのはヤマイさんだった。
そして彼女はこれから警察に自首する・・・。君も・・もう終わりにするんだ。」
ミヨリ「・・・・・。わ・・わたしは・・・。」
ハヤト「さぁ、成仏するんだ・・。」
ミヨリ「わ・・たしは・・・。」

『いややああああぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!』

ハヤト「まずい!暴走してる!!」
小吉 「えぇっ!?どうするんですか!!??」
ハヤト「・・・・しかたない・・・。」

するとハヤトは、触れることの出来ないミヨリの体を抱きしめた・・・。

サヨリ「!!?」
ハヤト「サヨリちゃん・・辛かったんだろ・・・今日こそ君のその無念・・
俺が解放してやるからな・・。」
サヨリ「・・・・・。」

ハヤトは懐から“封印香炉”を取り出すと、おもむろにその蓋を開けた・・。
すると・・・

??? 『サヨリ・・・』
サヨリ 「え・・・?」
??? 『サヨリ・・・』
サヨリ 「お・・姉ちゃん・・・?」

香炉の中からミヨリの霊が現れた。
ハヤト 「捕獲に手間取ったが・・・連れて来たぞ・・・。
ミヨリちゃん、妹に全部話してやるんだ。」
ミヨリ 『はい・・・。』

そういうとミヨリは語りだした。

ミヨリ 『サヨリ・・・ごめんなさい・・・私、
決してあなたを裏切るつもりなんかなかった。』
サヨリ 「な・・何よ今更・・。」
ミヨリ 『私・・石鹸にちゃんと名前を書く前に死んでしまって・・。』
サヨリ 「だから・・何よ?」
ハヤト 「そしてそこに書かれるはずだった名前は違った・・・。」
サヨリ 「・・・・。」
ミヨリ 『それに、私トモくんと付き合ってなんてなかった!』
サヨリ 「えっつ!?」
ミヨリ 『私・・確かに何度かトモくんに会ってた・・・でも、それはあなたを大切にしてほしいって・・・お願いするためだったの!!』
サヨリ 「!!」

サヨリはその時、あの晩・・・ミヨリが死んだあの晩の事を思い出した・・。

トモヒロ「サヨ・・今日はもう帰るよ・・。」
サヨリ 「え~?そんなこと言わないで、泊まってってよ。」
トモヒロ「いやいや、もう遅いし、それに・・・ミヨリとの約束もあるしな!」
サヨリ 「え?なに・・お姉ちゃんとの約束って・・。」
トモヒロ「いや・・お前とずっと一緒に居たいからな・・・約束は守らないと。」
サヨリ 「え?どういうこと?」

・・
・・・・
・・・・・・

サヨリ 「約束・・・そういう事だったんだ・・・。」
ミヨリ 『そう、「家に遊びに来ても日付が変わる前に帰る」トモくんにお願いした約束の一つ。』
サヨリ 「おねぇちゃん・・・」
ミヨリ 『サヨリ・・・わたし、あなたを守りたかった・・。トモくんとはずっと一緒にいて欲しかったけど・・二人とも未成年だから・・・。』
サヨリ 「おねえちゃん・・・」
ミヨリ 『それなのに、私って詰めが甘いね・・・。結局あなたを苦しめてしまった。』
サヨリ 「ん~ん!そんなことない!!私にこうしてちゃんと真実を伝えてくれた!ありがとう…。・・・優しくて、温かくて・・・私の大好きなお姉ちゃん!」
ミヨリ 『・・・・・』

ミヨリは微笑んだ

ハヤト 「さぁ・・そろそろ時間だな・・。」

ミヨリ 『もう・・・行こう・・・』
サヨリ 『・・・うん』
ミヨリ 『あの世で・・・罪・・・償わないとね・・・。』
サヨリ 『・・・そう・・だね・・・・。』
ミヨリ 『ハヤトさん・・本当にありがとうございました。』
ハヤト 「・・・。」
サヨリ 『そして・・本当にすいませんでした・・・。』
ハヤト 「・・・・・。」

2人  『これで・・・成仏できます・・・・。』

パァァァァァ・・・・

そう言い残し・・二人は成仏していった・・・・。


ハヤト「ふ~、久々だな。魔物との対決を免れたのは・・。」
小吉 「す、凄いですーーーーー!!!!今気付いたんですけど、あなた最近噂になってるナイトメアバスターズですよね!?」
ハヤト 「ああ・・そうだ・・もうそんなに有名になってるのか・・」
小吉 「はい!私この手の話大好きで!いつか貴方たちの事
小説にしようと思ってたんです!!」
ハヤト 「ほぉ・・そうか・・・(マズいな・・)」
小吉  「あの・・私・・小説家を目指してます海道小吉といいます!!あの・・
今日の出来事、小説にしてもいいですか・・?」
ハヤト 「・・・お前・・まだ懲りてないのか・・・お前のせいで間違った噂が広まって・・
     何人も人が死んだっていうのに・・・」
小吉  「あ、あれは・・・私だってまさか本当の事になるとは思ってませんでしたし・・!
     それに、今度はあなたたちの事“ちゃんと”書きます!
だって今日の事は目の前で見た真実なんですから!!」
ハヤト 「・・・・そうか・・好きにしろ・・・。」
小吉  「やった!!ありがとうございます!!・・・あ、ところで今回の件、依
頼料とかって発生するんですか・・?」
ハヤト 「いやいや、今回は俺たちが勝手に嗅ぎまわってやったことだ。
そんなもん請求しないさ。」
小吉  「はぁ・・よかった」
ハヤト 「(露骨に安心したな・・。)」

そしてハヤトは、去り際に懐から“あるもの”を取り出した。

ハヤト 「そうそう、今俺たち大々的に宣伝しててな。よかったらこれ、貰ってくれ。」
小吉  「これは・・・おせんべい・・ですか?」

それは、三つ巴の焼き印が入った煎餅だった。

ハヤト 「ま、名刺代わりだ。」
小吉  「あ、ありがとうございますお腹すいてたんです!!
お金も取らない上に粗品までくれるなんて!何ていい人なんだ!!」
ハヤト 「(こいつどんだけ金ないんだ・・?)」
小吉  「あの・・絶対に小説家になって、あなたたちの話はやらせて見せますからね!!」
ハヤト 「・・おう・・がんばれよ・・。」
小吉  「はい!!」

そう言うとハヤトはその場を後にした・・・。

そのご小吉はパソコンに向かうと、早速今日の出来事を小説に書き起こそうとした。

小吉 「よ~し・・見てろよ・・今度こそ小説家になってやる!」
そう意気込みながら先ほどの煎餅をかみ砕くと・・・・

・・・・一連の出来事を忘れてしまったのである・・・・。

そう、これが人知れず悪夢と戦う、ナイトメアバスターズのやり方なのだ。
一人の記憶を消すには、呪文を込めた煎餅一つで事足りるのだった・・・。

◆路上
今宵も悪夢を晴らしたハヤトは、自ら乗って来たバイクに寄りかかると電話をかけ始めた。

トゥルルル・・・トゥルルル・・・
ガチャ・・

ハヤト「あ~もしもし、バンか?・・終わったよ・・。」
バン 「おう、こっちも今、ヤマイさんを警察に引き渡したところだ。」
ハヤト「そうか・・・」
バン 「しかし今回の件・・どうする?」
ハヤト「どうするって・・何が?」
バン 「いな・・一人の記憶を消したところで、今回の都市伝説、
すでに相当広まってるんだぞ。」
ハヤト「あぁ・・・そうだった。」
バン 「まあ、あくまで都市伝説だし、そっとしといてもいいかもしれんがな・・。」
ハヤト「そうだな・・・しかし、それだと・・・俺はちょっと気に食わないな・・・。」
バン 「は?何がだよ・・・。」
ハヤト「そうだな・・・あの話・・ちょっと書き換えてやるとするか・・・。」
バン 「お、おいハヤト、人の話聞いてんのか?・・おい・・ハヤトーーーー!」

ハヤトはバイクのエンジンをかけ、その場を後にしたのだった・・・・・。

◆数日後
少女A「ねぇねぇ知ってる?今流行りの都市伝説?」
少女B「え?ひょっとして“サヨの石鹸”の話。」
少女C「あ~それだったら知ってるよ!真犯人、捕まったんでしょ!?」
少女B「そうそう!・・確か、ヤマイさん・・だっけ?」
少女A「いやね、それがあの話、まだ続きがあったんだって。」
全員 「うそ!?」

少女A「ちょっと紙とペン貸して!」

少女は紙に大きく“サヨ”と書いた。

少女B「そ、それがどうしたのよ?」
少女A「でね、この石鹸で髪を洗うとサヨリちゃんの霊に殺されちゃうんだけど・・・
一つだけ助かる方法があるんだって!!」
少女C「え!?どうやるの!?」
少女A「あのね・・本当に危ないって思ったら、石鹸に一文字加えるの・・・。」

そういうと少女は、先ほどの紙に再びペンを走らせると“サヨ”という文字に一文字書き足し、それを90度回転させるとみんなに見せた。

全員 「これって!!」

それは・・・

『山井』という字になっていた・・・。

つづく!