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新世紀陰陽伝セルガイア

第四話~線香の香り~

前回のおさらい

憧れであったナイトメアバスターズとの遭遇がキッカケとなり、魔物を打ち破る力を目覚めさせた少年エン。バンの口から発せられた『セルガイア』とははたして・・・。

第四話~線香の香り~

◆学校
桜祭りでの戦いの翌日、学校に登校したエン。
テレビで報じられた『怪物を倒した少年』が自分だという事を周りにいくら語ろうと、やはり信じてくれる者は誰ひとりいなかった…。
こうして何気ない日常へと引き戻されていくエン…。しかし、突如鳴り響いた構内アナウンスをきっかけに、彼は再び非日常の扉をくぐることになるのだった…。

ピンポンパンポーン

『これから、月曜日の朝礼を始めます。全校生徒は速やかに校庭に集合してください。』

その声を聴くと、エンは他の生徒たちと共にダラダラと教室を後にした。

◆校庭
4月の暖かな陽気に色めいて桜咲くその校庭は、集う生徒たちの心を和やかにする。
青く澄みきった空がそれをさらに助長させている。
そのせいか、眠気を隠しきれない生徒もちらほらと見受けられ・・・
エンもその内の一人であった。

大きなあくびをしながら待っていると校長が現れ、壇上へと登った。

校長「えー、今日は皆さんに、とても悲しいお知らせをしなければなりません・・。」

ザワ ザワ ザワ

ざわつく校庭に重たい声で、校長は再び語り始めた。

校長「昨夜、2年C組の姫矢舞人くんが、心臓発作のために亡くなりました。」

エン「・・・・・えっ?」

校長「授業にも熱心に取り組み、柔道でも全国大会に出場経験もあった生徒で、教員一同も非常に残念に感じております。」

エン「・・・・・うそ・・でしょ・・・?」

ザワ ザワ ザワ

生徒たちの声が徐々に大きくなる。

エン「うそ・・・だよね・・・?」

校長「仲の良かった生徒も、非常に多くいると聞いています。
突然の事で驚かれたとは思いますが、その想いを乗り越えるためにも、ここで皆さんで黙とうを捧げましょう・・・。」

『黙とう・・・』

・・
・・・
・・・・・

静まり返る全校生徒。

しかしその言葉を聞いた瞬間エンの頭は真っ白になり・・

エン「そんな…」

「うそだ・・・」

「ウソだぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!」

けたたましい叫び声をあげると、彼は校庭を走り去った!

校長「ちょっとキミ!待ちなさい!!」

その言葉はもはや彼の耳には届いていなかった。

彼は2年C組へと向かって全速力で走った。
そこに、いつものように、笑顔のマイトが待っている気がしたから・・・。

エン「(ウソだ!そんなのウソだ!!)」

流れ落ちそうになる涙を振り切るように彼は走り

ガラガラガラ!!

渾身の力で教室の扉を開いた!

エン「マイトっ!!」

淡い期待を込めて名前を叫ぶエン。
・・・・しかし現実はあまりに残酷であった。
ポツンと置かれた白い花瓶が、その全てを物語っていた・・・。

◆葬式
マイトの葬儀の式場に、もちろんエンは参列した。
正直なところ、この日まで現実が受け止められずにいた彼は放心状態だった。
しかし参列者たちのすすり泣く声を耳にし、脳裏にマイトとの思い出の日々が蘇り・・・・、とうとう大粒の涙がこぼれ出した。

エン「マイト・・・マイトぉぉ・・・ごめんよ・・ごめん・・・・。」

自らの責任で、親友の命を奪ってしまったこと。
ひと時の喜びにかまけてマイトの存在を忘れてしまっていたこと。
全てが心を掻き毟り、焼香を終えるとすぐさま式場を後にしてしまった。

トボトボと式場の外に出てきたエンの眼に、ある光景が飛び込んできた。
マイトの許嫁であり、密かに想いを寄せている、あのスズネの姿であった・・・。

彼女もまた葬儀に参列していたのだが・・・会場にいる事ができず外の腰掛で悲しみに伏していた…。

それを目の当たりにしたエンはますます心の傷をえぐられたような感覚に陥り、小さい背中をさらに丸めて、そのまま歩き出した。

ところが・・・

スズネ「あ・・八神くん・・・」

彼女の方がこちらに気付き、話しかけてきた。

エン「よ、夜野さん・・・。」

話しかけられては仕方がない・・・エンも声を掛けた。

スズネ「非常に・・残念でございます・・・。お二人とも・・・とても仲がよろしかったのに・・。」

スズネは由緒正しい家の出で、その言葉使いもいつも道理の丁寧さだった・・・。
そして、深い悲しみの中にいるはずの彼女は気丈に振る舞い、エンを気遣う言葉を投げかけた。

エン「夜野さん・・・。」
スズネ「姫屋君…、昔から心臓の具合がよくありませんでしたから…。『くれぐれも無理はなさらずに』といつも申し上げていたのですが…。」
エン「・・・・・。」
スズネ「でも・・・私たちがこうして悲しんでいたら、姫屋君・・・きっと怒って化けて出ます!だから・・・明日からまた学校がんまりましょう!」
エン「・・・・・。」

その言葉の影に、とてつもない悲しみが秘められていることは
エンにも容易に想像がついた。
そしてその原因は、決して心臓発作なんかじゃない。
だからこそ余計に辛くなった。

エン「・・・・・ごめん・・・・。」
スズネ「・・・え・・?」
エン「ごめん・・・。」
スズネ「・・・なぜ・・謝るのです・・・?」
エン「・・・・・。」

エンはもうそれ以上話すことが出来なかった。

スズネ「では、わたくしはこれにて…。明日・・学校で…。」
エン「・・・・・・。」

そう言ってその場を立ち去るスズネの背中を見て、エンはとうとうその場に泣き崩れたのだった。

エン「マイト・・・ごめん。ホントにごめん!謝っても謝りきれないけど!ホントにごめん!!!」

嗚咽を漏らしながら泣きじゃくるエン。
マイトの命を奪っただけでなく、その死でスズネの心までをも傷つけてしまった。
その事実が、胸に突き刺さった・・・。

エン「マイト・・・ごめんよ・・・。もうこれ以上何も言えないけど・・・・ちゃんと成仏して・・・・マイト・・・。」

成仏・・・。
自分で言い放ったその言葉に、マイトの死の事実を再び痛感してしまうエン。

そんな時だった・・・。

「う~ん・・・なんか、できないんだよなぁ。」

エン「え?・・そ、そんな事言わずに・・・・。」

「いやぁ・・・そう言われてもな・・・出来ないものは出来ないっていうか・・・」

エン「何でだよ!こんなに頭下げてるのに!」

「いや、だって無理だし・・・。」

エン「む、無理ってどういうこ・・・・・・って!」

エン「あああああああああああっ!!!!!!」
「わああああああああああああ!!!!!!」

そう!なんとエンの目の前に、マイトが立っていたのである!

マイト「お、脅かすなよ!ビックリしたぁ!!」
エン「それはこっちのセリフだよ!マイト!お前・・死んだんじゃ!?」
マイト「・・・ああ・・そうみたいだな・・。」
エン「そう・・みたいって・・・・。」

たしかに、そう言うマイトの姿は異様であった。
白装束を身にまとい、額にはいわゆる“三角形の白いやつ”がついている。
というか、そもそも足がない。
もはや世に言う“おばけ”そのものだった。

マイト「やっぱりな・・・お前なら見えるんじゃないかと思って出てきてみたけど。・・予想どうり湿っぽいな・・・。」
エン「当たり前だろ!マイト・・!ごめん!ホントにごめん!僕のせいで・・・。」
マイト「いや・・・俺もともと心臓弱かったしな・・・きっとこれが俺の寿命だったんだよ!」
エン「マイト・・・。」

マイトは強がっているわけでも、エンを勇気づけているわけでもなかった。
彼はもともとそういうヤツなのである。
しかし、やはりエンにはその言葉が辛く響いた。

エン「マイト・・・違うよ!僕のせいだよ!」
マイト「もぉ・・・いいからメソメソすんなって!俺はもう自分が死んだってこと認めたんだからさ!」
エン「でも・・・でも・・・!」
マイト「ぁあもう!これだからおちおち死んでらんないんだよ!俺が『良い』っつってんだからいいの!もう終わりおわり!」
エン「・・・うぅぅ・・・。」
マイト「はぁ・・・・。」

強い男である。自分が死んだことよりも、周りが悲しんでいることにあきれてため息をついた。
そして、ひたすら謝るエンに向かって意外な言葉を口にした。

エン「・・・・」
マイト「・・・・そんなに謝るぐらいだったら・・八神、俺の頼み・・聞いてくれないか?
きっとお前にしか頼めない。」
エン「・・・え?僕にしか頼めないこと…?」
マイト「そう、お前の霊感で、ちょっと手助けしてほしい。」
エン「!?…そう言ってくれるのはうれしいけど…僕、また誰かを傷つけるかも…」
マイト「う~ん…じゃあせめて話だけでも聞いてくれ。」
エン「う、うん…それなら…」

そしてマイトはこう切り出した。

マイト「いやな・・・俺さっき成仏できないって言っただろ?」
エン「うん・・・・やっぱり僕のせいかな…。」
マイト「いやいや違うんだよ!・・・ほら・・ちょっとあれ見てみ?」

そういうとマイトは不意に上空を指さした。

エン「え?・・・あれは・・・・?」

頭上を見上げるエン。
するとそこには一か所だけ、青空を遮るようにまがまがしい妖気を放つ雷雲が立ち込めていた。

マイト「いや・・・俺いろいろ調べたんだけど、どうやらこの寺の住職、…生臭坊主みたいだぞ?」
エン「え??ここのお坊さん…そんなに体臭きついの…?」
マイト「バカ!そういう事じゃねーよ!ちゃんと仕事してない坊さんってこと!」
エン「なるほど…。勉強になったよ、ありがとう。」
マイト「いやいやどういたしまして・・・・って、ちがぁーーーーう!」
エン「!?」
マイト「そんな話がしたいんじゃないんだよ!・・実はな・・」

そういうとマイトは本題に入った。

マイト「ここの坊さんがあまりにサボってるお蔭で、成仏できない幽霊がウヨウヨ、あの雲の塊になって浮かんでるって訳。そしてその弊害で俺も成仏できないみたいなんだよなぁ。」
エン「なるほど・・・。」
マイト「なあ八神・・・お前あの雲、何とかできないか??」
エン「う~ん・・・・・。」

エンはしばし考え込んだ。
何とかしたいのは山々だが、やはり自分の行いでまた誰かを傷つけてしまうかもしれない・・・。
それに、まして自分の霊力でその雲をどうにかできるとも思えなかった…。

マイト「八神・・・お願いだ…俺の頼み…聞いてくれないか…?」
エン「・・・・・。」
マイト「お前にしか頼めないよ…。」
エン「…ぼ、僕にしか…。」

その言葉に、エンの心は動かされた。
たしかに、この場にあの黒雲が見えている人物が自分以外にいるとは思えない…。
それに、自分のせいで命を落としてしまった親友の頼み…。
断れなかった…。
それに、これがせめてもの罪滅ぼしになる…そうも思えたのだ。

エン「…分かったよ…。初めてやるからできるかどうかは分からないけど、一つだけ・・・やって見るよ。」
マイト「おお!そうか!!ありがとう!!やっぱり頼みの綱はお前だけだ!」

自称と言えど陰陽師を志す少年。
エンはその黒雲の対処法に、全く見当がつかないという訳ではなかった。

エン「じゃぁ…やってみるよ…。」

スッ・・・

そう言うとおもむろに、エンは片手の人差し指と中指を口元にあてがうとこう唱えた。

『不動明王に帰名したてまつる!我が頭上の雷雲を滅せよ!
ノウマクサマンダ!バザラダンカン!』

すると!突如として雷雲がウネウネと蠢きだしたではないか!!

マイト「おお!やったぞ八神!!!凄いじゃないか!!!」
エン「や…やった!」

喜びの色を見せるエンだったが、正直自分自身にこんな事が出来るとは思っていなかった。
今までの悲しみもウソのように吹き飛び、急に自信と活力がみなぎってきた。

ところがだった・・・。

マイト「お・・おい・・八神・・・・・あれ!」
エン「え!?」

浮かれていたエンが再び頭上に目をやると、
先ほどよりも雷雲が巨大化しているではないか!

マイト「どういうことだ!?確かに反応してるよな、あれ・・・。」
エン「うん・・・けどもしかしたら・・・・変に刺激しちゃったかな・・・」
マイト「え!?あれ、大丈夫なのか!?」

ふたりの会話をよそに雷雲はみるみる大きくなり・・・・
ほとばしる閃光はついに、稲妻となって大地を貫いた!

ゴロゴロ・・・バーーーーン!!!!!

辺りに土煙が舞い、二人の視界を遮った。

マイト「なんだ!?何が起きてる!?」
エン「あっ!・・・・あれは!!?」

すると立ち込めていた煙の中から、なんと巨大な魔物が現れたではないか!!

ギャィイイイイイイ!

まるで巨大な蜂のような様相を呈したそれは、二人に向かって雄叫びを上げた!

マイト「おいおい!どういうことだよ!?」
エン「そんな…!まさかあの雲にあんな魔物が潜んでるなんて!!」

どうやら事の寺の住職はあまりに手を抜いた仕事をしていたようだ。
長年成仏できずに漂っていた霊体たちは集合体となり、エンの呪文に刺激されついに魔物となって出現してしまったのである!

きゃぁあああ!
何だあれは!?
に・・・逃げろぉぉおおおお!!

遠方より、その光景を目撃した幾人もの人々の叫び声もこだまし始める!

エン「困ったなぁ・・・・」
マイト「おいどういうことだ!?あの化け物、俺たち以外にも見えてるのか!?」
エン「・・うん。俺の知識では魔物ってのは幽霊と違って誰でも見えるんだよ!」
マイト「そうなのか!?」
エン「そう。その証拠にほら、みんな逃げ惑ってる!」

な・・何だあの怪物は!?
早く!!早くみんな逃げるんだ!!

遠方より聞こえる叫び声は、更に多くなっているようだ。

エン「しかももっと困った事があるんだ・・・。」
マイト「は!?なんだよ・・・」
エン「実は魔物って・・・・」

『陰陽師でも倒せないんだ・・・。』

マイト「なんだってぇええええええ!!!???」

その通り、遥か昔より実態を持った悪霊は魔物と呼ばれ、たとえ陰陽師であろうとも
“封印する”以外に打つ術はない。
その理(ことわり)だけは今も覆ることのない真実なのである。

マイト「どどど、どーすんだよ!?」
エン「ごめん・・・ごめん!!まただ・・・僕のせいで…。ごめん!!」
マイト「くそっ…」

そして、ついに二人の存在に気が付いた魔物が突如攻撃を仕掛けてきた!!

エン「うわっ!!」
マイト「うおっつ!!」

腹部より長く突き出された巨大な針を、二人は間一髪かわすことができた!

マイト「エン!お前なら何とかできるんだろ!?なぁ!そうだよな!?」
エン「何とか…したいよーーー!」
マイト「希望かよーーーーー!!!!」

そうこうしていると魔物は再び巨大な針を、二人めがけて突き刺してきた!

「うわっ!!」

このままでは命を落とすのは時間の問題!

しかし次の瞬間
焦るエンの脳裏にある記憶がよみがえった!
そう、あの桜祭りでの戦いの記憶である。

エン「(そうだ・・・あの戦いは本当だったんだ!もしあの力をもう一度使えれば…!)」

あの夜、エンの額には第三の眼が開き、不思議な刀を手にしていた・・・。
そしてその刀は魔物を切り裂いた・・・。
あれは間違いなく自分ということは、テレビのニュースで知っている!!
ならばもう一度その力を使えるはず!エンはそう思った。

エン「マイト・・・。僕ならあの魔物…倒せるかもしれない!」
マイト「ホントか!?」
エン「うん、…僕の額に第三の眼が現れれば・・・きっと勝てる!」
マイト「何言ってるかよく分かんないけど、何とかできるなら頼むぜ!!」
エン「よぅし・・・見てろ・・・。」

すると、エンはおもむろにこう叫んだ!

『出でよっ!!』

・・
・・・・
・・・・・・・・・

しかし、エンの体には何の変化も起こらない。

マイト「ぉ・・おいおい!何やってんだ!?」
エン「だ・・だめか・・・・。それじゃええ~っと・・・」

『開け!第三の眼っつ!!!』

・・
・・・・
・・・・・・・・・

やはり何の変化もない。

エン「だめか・・・。」
マイト「ちょっと!何やってんだよ!」
エン「えっと・・じゃぁ・・・開け・・・もういっこの目っつ!」
マイト「何だよそれ!?」
エン「えっと、えっと・・じゃぁ・・・ひらけゴマっつ!!」
マイト「んなワケあるかぁあああ!!!」

ギヤオォオオアア!!!
「うわぁっつ!」

魔物は再び二人に襲い掛かる!!
そう、漫才をしている場合ではないのだ!
魔物の攻撃は激化し、幾度もその腹部の針を突き立てた!

「うわ!うわぁ!うわぁああっつ!」

再び間一髪で避ける!
しかしエンはその時気付いていた。
唯一の希望であったあの“第三の眼の力”が使えない以上、もう勝ち目はない・・・。

マイト「八神!!危ない!!」
エン「・・!!」

エンは、迫りくる魔物とマイトの言葉にとうとう命の危機を感じたが・・・・

ザシュ!ザシュッッ!!

止まぬ攻撃をひたすら避け続けるしかなかった。

マイト「八神!!俺が悪かった!!もういい!!逃げろ・・・!!」
エン「くそっ・・・!!」

しかし!
エンは諦めなかった!!

あの夜マイトから教わった『自らの責任を果たす』事。
今度こそ!マイトの目の前で実行したかったのだ!

ザシュ!ザシュッッ!!

やがて攻撃はエンの体をかすめるようになり、徐々に血が滲んできた・・・。
しかしそれでもエンは攻撃を避けながら、魔物を倒す策を練る・・・。

ザシュ!ザシュ!ザシュッッ!!

陰陽師に関する知識を掘り起し、魔物を封じる方法を思い出そうと、彼は必死になった。

その時!!

マイト「八神!!後ろだ!!!」

魔物はエンの背後に回り込み、渾身の力で針を突き刺してきたのである!!

ズバーーーン!!!

その針は大地を穿ち!怒号と共に砂煙をあげた!

マイト「八神ぃぃぃいいいい!!!!!」

やられた!!
マイトがそう思ったとき!
しゃがんでその一撃を避けているエンの姿が現れた!!

マイト「よかった・・・・!!」

マイトはエンの強運に感心した!
しかしエンがしゃがみ込んだのは決して偶然ではなかった。
魔物を封じるための秘術をついに思い出し、実行し始めていたのである!

エン「青龍避万兵(せいりゅうひばんぺい)!!」

マイト「え!?あいつ・・・何やってる!?」

それはまさに魔物を封印する術であった!
方法は、陰陽師が使用する星形の魔法陣“五芒星”を大地に刻みつつ、
その頂点において呪文を唱えていく。
最後の頂点で呪文を唱えた暁には、見事魔物を魔法陣に封じ込み、異界の彼方に封じ込めるというもの・・・。

その最初の頂点に跡を刻むため、エンはしゃがみ込んでいたのである!!

ギャォオオオオ!!
ザシュ!!ザシュッッ!!!

再び攻撃を仕掛けてくる魔物!

エン「くっ・・!!!」

それを再び避けると、エンは次の頂点に向かって走り出し・・

『白虎避不祥(びゃっこひふしょう)!!!!』

呪文を唱えて、地面を指で掻(か)く!

魔物の攻撃も止まらない!
ザシュ!!ザシュッッ!!!

エン「うぉおおおおおお!!」

しかしエンは素早く身を翻すと、次の頂点、次の頂点へと、向かって行った!!

『朱雀避口舌(すざくひこうぜつ)!!!!』
『玄武避万鬼(げんぶひばんき)!!!!』

そしてついに、魔法陣最後の頂点に辿り着いたのだった!!!

エン「・・・マイト・・・ホントにごめんよ…僕のせいで…。でも今度こそ!その頼み叶えて見せる!!!!!」
マイト「八神!!」

そう言うと、エンはとうとう最後の呪文を口にした!!

『黄竜伏(こうりゅうふく)!!!!・・・・』

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・

ところがだった。
どういう訳か何も起こらない・・・。

マイト「エン・・・・?」
エン「あ・・あれ・・・?」

 『こうりゅう・・・ふく・・・・・!!』

どうしたことだろう?
まさかエンには扱えぬ秘術だったのだろうか・・・?

『こう・・りゅう・・・ふく・・・・・・・・・』

マイト「どうしたんだよ!?八神!!」
エン「あれ・・・・・あれぇ・・・・??」

『最後の一文字なんだっけぇえええーーーーー!!!!!』

マイト「ウソだろぉおおおおおおおおおお!!!!????」

そう、エンは肝心な“最後の一文字”だけド忘れしていたのである!!

エン「ごめんよぉぉぉ・・」
マイト「ごめんじゃねーーよっ!!」

そしてそんな中!ついに魔物の針の切っ先は、真っ向からエンの体を捕えた!

エン「ぅわぁあ~!僕、駆け出しの陰陽師なんです!ごめんなさ~~~~いいい!!!」

ギャォオオオオオオ!!

しかし容赦なく!魔物はその針を突き出した!!!

エン「!!!っつ!!!」

もうダメだ!!
エンもマイトも目を瞑った!!

・・・・その時だった!

 ジャクウンバンコクソワカ!!

エンの前方で声が響いた!!!

エン「!?」

エンが目を開けると、そこには一人の背中が映し出され、
それは魔物の動きを封じ込めていた!!!

マイト「あ・・あの人は・・・?」

エン「ば・・・・」
『ばっちゃ!!!??』

そこに立っていたのは霊媒師“八雲”であった・・・。

つづく!