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新世紀陰陽伝セルガイア

NEW 第二十四話~口惜しの夢見鳥~

前回のおさらい
 魔物の反応を探知したナイトメアバスターズは、現場のアパートの大家に聞き込みを開始した。その様子を隠れながら見ていたエンだったが、引き連れていたアザミが突然バスターズと大家の目の前に現れ存在がバレてしまう。そして突然大家の腕時計を鷲掴みにしたアザミを止めに入るエンだったが、アザミは大家の違和感に気が付いたいた。なんと、大家本人が人間に擬態した魔物だったのだ…。

第二十四話~口惜しの夢見鳥~

◆大家宅にて
 大家の正体は魔物だった!
 『開眼っつ!!』
 ハヤトとエンは、咄嗟に白毫神器を構えると臨戦態勢を取った!
 しかしその途端だった!
一同 「うわぁっつ!!」
 ハヤト・エン・バンの三人が、同時に声を上げる!
アザミ「あ!みんな!!」
 なんと魔物が振りかざした大きな鎌のような腕に、三人が囚われてしまったのだ!
魔物 「コロシテヤル…。コロシテヤル…。」
ハヤト 「しまった!!」
 魔物は三人を締め付け始めた!
バン 「くつ…ま、まさか大家自身が魔物だったとは…。」
エン 「じ…自分のアパートを餌場にしようとしてたんだ…。」
 キシャァァァ!!
 そんな中、唯一魔物の攻撃を逃れたアザミは、自らの主であるエンを助けたい一心で、魔物に対して啖呵を切った。
アザミ 「…や、やめてよ…」
 キシャァァ!!!
アザミ 「ひぃっ!」
エン 「アザミ!」
 しかし、彼女は怯え声も震えていた…。そして次の瞬間!ついに魔物はアザミに向かって、三人を捉えていない方の鎌を振り上げた!
エン 「アザミ避けて!!!」
 ブンッツ!!
 魔物は空気を切りながら巨大な鎌を振った!!
アザミ 「きゃぁ!!」
 間一髪避けたアザミだったが、魔物は再び鎌を持ち上げた!
アザミ 「いや…いやぁぁぁああああ!!!」
エン 「アザミーーー!!!」
 すると、ついにアザミはパニックを起こし、魔物を背にして逃げ出した!
アザミ 「きゃぁぁあああ!!!!」
 魔物はアザミの息の根を止めるべくその後を追い始める!!巨大な体でバキバキと音を立てながら家を破壊し、ついに屋外へと姿を現してしまった!
ハヤト 「…くそっ!エン!アザミに指示を出してくれ!的確に誘導しないと街が破壊されてしまう!!」
エン 「!?」
 その言葉通り、右往左往しながら逃げるアザミを追いかける魔物は、その動線上にあるあらゆる物をお構いなしに破壊していた!!そして、その光景を目撃した多くの人間もまた魔物から逃れようと必死に走り出していた!
 街中に怒号と悲鳴、そして破壊される建物の音が響いている。一刻も早くこの状況を打破しなければ、多くの命が危ぶまれる!ハヤトは魔物の腕に掴まれ苦悶の表情を浮かべながらも、声を張り上げエンに指示を出す!
ハヤト 「おいエン!式神はヌシであるお前の指示しか聞かないんだ!!うまく操って人気のない場所に魔物を誘導しろ!」
エン 「は、はいっ!!!」
 言われるがまま、エンはアザミの進行方向を道路や開けた場所に定めようと指示を飛ばした!
エン 「アザミ!!そっちじゃないよ!左!左に曲がって!!!」
アザミ 「きゃーーー!!」
ブン!ブン!バゴォッ!バゴォツ!!
 しかしエンがいくら叫んでもその指示は伝わらず、アザミは混乱しながら辺りを飛び回った!!
ハヤト 「おいエン!しっかり指示を出してくれ!!」
エン 「は、はい!アザミーー!!そっちじゃないよ今度は右だ!!右に行けー!!」
アザミ 「きゃーーー!!!」
 ところがやはり指示は届かない!
ハヤト 「おいエン!頼むよ!!」
エン 「や、やってますよ!でも通じないんです!」
バン 「くそっ…俺には見えないがアザミの奴、完全にパニックに陥ってるな…。」
 バンの言葉通り、アザミは正気を失っていた!小さな羽を懸命に羽ばたかせ、その身に迫る恐怖から逃れようとただただ必死だった!
アザミ 「きゃーーーーー!!!」
バゴォ!バゴッツ!!!
 そして、アザミが逃げれば逃げるほど街は破壊されていった…。
エン 「ご、ごめんなさい…。」
ハヤト「くそっ!時計の違和感を見つけた時は感心したが、やっぱり“お前の”式神だな!」
エン 「…。」
バン 「おいハヤト!こんな時にいがみ合っててもしょうがないだろ!」
ハヤト 「…そうだな…。しかし、どうするバン…。」
バン 「…。俺たちの他にこの状況を何とかできるものが居るとすれば…。八雲か…。」
エン 「そうか!ばっちゃ!」
ハヤト 「だが連絡が取れたところですぐには来られないぞ!」
 確かにハヤトの言う通りだった。八雲神社からここまでは相当な距離がある…。再び頭を悩ませる一同はキリキリと締め付けられる魔物の腕の中で、必死に打開策を練った…。
バン「…よし、他に一つだけ方法があるぞ…。」
 そしてついにバンが他の策を思いつき、自らの隣で魔物に締め付けられているエンに対して指示を出した。
バン 「おいエン…」
エン 「は、はい…」
バン 「俺の袴のポケットから…スマホ…取れないか」
エン 「え!?でもばっちゃに連絡しても…!」
ハヤト 「なるほどな…。」
バン 「いいから早く!!」
エン 「…はい!」
 どうやらハヤトにはその意味が分かったようだ。エンは困惑したが、バンの言葉を信じてすぐさま彼の袴へと手を伸ばした。
エン 「バンさん!ありましたスマホ!今触ってます!」
バン 「よし…取れるか!?」
エン 「はい!」
 エンは言われるがままそのスマホを握りしめると袴から取り出した!その瞬間だった!
 グギャオー!!
一同「!?」
 突然の魔物の揺れに耐えかね、エンがスマホを手から滑らせてしまった!
エン 「あっ!」
 スマホは宙を舞った…。そのまま地面に落ちていく…。残された一つの方法が自らの手から逃れてしまった…。エンは目の前が真っ暗になった…。
 その瞬間だった!
バシッ!
エン 「え!?」
 なんと宙を舞っていたスマホがハヤトの手の中に瞬間移動しているではないか!!
ハヤト 「俺の能力を忘れてもらっちゃ困るな。」
エン 「ハヤトさん!!」
 そう、ハヤトは自らのセルガイアの能力“減速”の力で時を遅らせ、落ち行くスマホをキャッチしたのだった!
ハヤト 「バン、やるぞ!」
バン 「頼んだ!」
 そう言ってバンにアイコンタクトを飛ばしたハヤトは素早くスマホを操作すると、それは“デジタルキョンシー”へと姿を変えたのだ!
エン 「あ!!デジキョンだ!!!」
 そして、デジキョンはハヤトの手からスルリと抜け出すと地面に着地。どこかへと向かって行った…。
エン 「え!?どっか行っちゃったよ!?」
バン 「まあ見てなって…。」
 バンが自慢げに語ったその時だった。
ブロロロロ…
 どこからともなくエンジン音が鳴り響く。
エン 「あ!ブルバイソンだ!!」
 そう、街を破壊する魔物に向かい、バスターズの愛車であるブルバイソンがとてつもないスピードで向かって来たのだ!そして車のダッシュボードの上にはデジキョンがめり込むように鎮座しているではないか!
エン 「まさか、デジキョンがあれを!?」
バン 「そうだ!凄いだろ!!」
エン 「はい!!!」
 そして、ブルバイソンは凄まじい勢いで魔物へと突っ込んだ!
グギャオオッツ!!
 その勢いで、見事三人は魔物の腕から逃れることに成功したのだった!!
エン 「やった!!」
ハヤト 「…よし!」
 動きを止め、巨大な体を横たわらせた魔物であったが、安心するのはまだ早い。魔物はセルガイアの武器でしか倒せないのだ。
 そして、魔物は危機を察知し再びその体を素早く起こすと、三人めがけて突っ込んできた!
ギャオォォ!!!
 ところがその瞬間だった!突如魔物の巨体が空中に浮かび上がると制止したではないか!
エン 「!!ブルバイソン!!」
 なんとデジキョンが再び自動操縦でブルバイソンを操り、車体後部のモジュールを展開することで結界を張って魔物の動きを封じ込めたのだ!
エン 「そんなことまでできるんだ!」
バン 「俺の自信作って言ったろ!さあ二人とも!あとは頼んだぞ!!」
2人 『了解っつ!』
 こうして、ついに魔物は二人の刃によって葬られたのであった…。
◆静寂が訪れて…
 先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返り、一同はその場に佇んでいた…。
 確かに魔物には打ち勝った…。しかし街の様相は悲惨なものだった。多くの家屋が倒壊し、煙を上げている個所も見受けられた…。
 そしてそんな状況の中、エンは地面に伏しながらしくしくと涙を流すアザミの姿を発見し近づいて行った…。
エン 「アザミ…大丈夫…?」
アザミ 「ヌシさま…ごめんなさい…ごめんなさい…」
エン 「アザミ…」
 涙を流すアザミを見て、彼はかつての事件を思い出しながら励ましの言葉を投げかけた。
エン 「アザミ…初めての失敗だよね…次しないようにすればいいんだよ…。だから…また一緒に頑張ろう!」
アザミ 「ヌシさま…。うわぁぁぁああん」
 ヌシであるエンに嫌われてしまったと思っていたアザミはエンの言葉を聞いた途端、今度は安堵の涙を流したのだった…。
 そして、その光景をナイトメアバスターズの二人は無言で見つめていた…。
 幸い今回の事件で死者が出ることはなかった…。
◆それから数週間が過ぎ…
 ナイトメアバスターズはそれからも幾度となく魔物の事件に遭遇した。そして、これまでのように相も変わらず二人に内緒で同行するエンだったが、以前と明らかに違うことがあった。それは…、アザミが行く先々で何度も何度も大きなトラブルを巻き起こすという事だった。この日も何とか戦いを終え事件を解決させた一同だったが、エンは再びハヤトにこう言われてしまう。
ハヤト 「やっぱり、さすが“お前の”式神だな!」
エン 「そんなー…。」
 そして、始めのうちは寛容だったエンも次第にアザミに苛立ちを見せ始めていた…。そしてついに、こんな言葉を放ってしまう。
エン 「アザミ…。悪いけど、“次はないからね”…。」
アザミ 「うん…わかった…。」
 アザミ自身はこの事実を心底悔しく思っていた…。『ヌシであるエンの為に何としても活躍したい助けたい!』。式神としての当然の想いが果たせず、持ち前の天真爛漫さも徐々に失われつつあった…。
 そんなやり取りをしていると、バンのGPSからサイレンが鳴り響く…。魔物だ!!一同は休む暇もなく次の現場へと足を運ぶのであった…。
つづく