前回のあらすじ
香織を魔物の脅威から救うため、もともと魔物が封印されていた石碑の代わりに彼女の部屋に、バンが造ったお札を貼りつけたナイトメアバスターズ。今回の件は、これで戦うことなく魔物を封じることに成功したかと思われた。しかしその思惑はもろくも崩れ去る。アザミがバスターズと共に貼り付けた“謎のお札”のせいで、バンのお札が正常に作動しなかったのだ!再び香織は夢遊病のような状態となって部屋を抜け出し、その身を川へと投げるべく鉄橋へと向かって行ってしまった!
◆鉄橋
雷鳴轟き次第に雨脚も強くなる暗闇の中、鉄橋を照らす街路灯のオレンジ色の光だけが今にもそこから身を投げようとする香織の姿を映し出していた。一刻も早く彼女を救わなければ!ハヤトは自らのセルガイアの能力を使って時間を遅らせると、一足先に彼女の元へと向かってその体を後方から羽交い絞めにした。
ところがだった!香織は少女のそれとは思われぬ程の怪力でハヤトの制止を振り切ろうとしていた。その力は凄まじく、油断すればハヤトもろとも川底へと転落してしまうかと思われる程だった。このままではマズい!そう思ったハヤトは彼女を正気に戻そうと再び陰陽術を施した。だが、なんとその術が効かない!未だ実態の掴めぬ今回の魔物の力は強大なようだ。恐らく近くに潜んでいるのだろうが、もはやこれ以上はセルガイアの力で本体に攻撃を加えない限り対処できそうもなかった。そんな二人を救うべく、バンとエンも現場へと足を急がせていた…。
◆邸宅・香織の部屋
一方その頃、もぬけの空となった香織の部屋に一人戻った者が居た。アザミだ。彼女は自分が貼ったお札によって事態が悪化してしまった事に罪悪感を抱きつつ、ある違和感を覚えここに戻ってきていた。それは、“このお札がいったい何なのか”という疑問だった。自分はエンが落としたお札を貼っただけ。確実に魔物封印に貢献できたと思っていた。しかし現状は違った。実態の掴めない魔物は再び、どこからともなく確実に香織を死の淵へといざなっている…。「どうちて…なんで…」アザミはそう呟きながらひらひらと羽ばたき、自らが貼り付けたお札に近づいて行った。そしてとうとうそのお札に近づき、それを手に取ろうとしたその時だった。
パァァァ…
お札がほの明るい光を発したかと思うと、なんとそれが細かい光の粒となってアザミの身体へと吸収されたのだ。
アザミ 「やっぱり…あたちのなんだ…」
アザミはそのお札に見覚えなど全くなかった。しかし、この出来事によってそれが自分の所有物だったという事が確実となった。やはりこの事態を引き起こしてしまったのは自分…。そのことにアザミは深い悲しみを覚えた。
アザミはうつむき呟いた。「ヌシさま…ごめん…みんな…ごめん…」。彼女はどうすれば皆にそして彼女の頬を伝って一筋のしずくが零れ落ちたその時だった!アザミの脳裏にある情景が浮かんできた。それは、鉄橋の上でハヤトとバン、そしてエンが今にも川へと落ちそうになる香織を必死に引き上げようとしている姿だった!そう、今まさに橋の上では遅れてたどり着いたエン達も、香織を救出しようと渾身の力を込めて彼女の身体を引き上げようとしている最中だった。ところが、三人がかりでも香織の身体を引き上げることが叶わずにいたのである!恐らく各々の力など関係ない…魔物の強大な霊力が香織を川の底へと引きずり込もうとしているのだ!
アザミ 「ヌシさま!!」
自分の過失によって引き起こされた事態だったが嘆いている場合ではない!自分の主のピンチを察したアザミはすぐさま現場へと急行した!
◆鉄橋
現場では三人に加え、消えた娘を追いかけたどり着いた悟も香織を助けようと必死に彼女の身体を引き上げようとしていた。
悟 「香織!香織!!目を覚ましなさい!!!もういい加減にするんだ!!」
悟は未だに香織がただの夢遊病だと思っているようだったが、最早そんなことはどうでもいい。各々の目的は同じ、香織をこの窮地から救う事だった。
一同 「うぉぉぉぉ…。」
一同は渾身の力で彼女を引き上げようとするも、その体はいよいよ橋の欄干から上半身が飛び出し頭は完全に下を向いてしまっていた。
ハヤト 「く…何としても…助ける…ぞ…」
エン 「は…はい…!!!」
しかし、彼女の身体はまるで強力な磁石に引き寄せられるかの如く、徐々に、徐々にと川底に向かって落ちようとしていた…。
ズズ…ズズズ…
引き上げようとする一同の足が地面を滑る…。香織の身体はついにその大半が橋よりも外に出てしまっていた…。先ほどまでは腕や上半身を持っていた一同も、ついには香織の足首しか掴めない状態にまで陥っていた。
エン 「(ま…マズい…)」
このままでは全員まとめて川底へと落ちてしまう!そう思われたその時だった!!
一同 「!!??」
なんと突然香織の身体が軽くなったではないか!
エン 「アザミ!!」
そう、アザミが加勢し皆と共に香織を引き上げようとしていたのだ!!
ハヤト 「こ、この力は…」
ハヤトは驚愕した、セルガイアの能力者が二人いても引き上げることができなかった香織の身体。そこにアザミが加わったことで一気に軽くなったのだ。ハヤトはアザミの想定外の霊力に驚きを見せつつ、この状況に好機を見出し皆に声をかけた!
ハヤト 「よし今だ!!一気に引き上げるぞ!!」
だが、その時だった。
エン 「どうして来たの!?余計な事はするなってあれ程言ったじゃないか!!どっか行っててよ!!」
なんとエンはアザミの助太刀を、真っ向から拒否したのである!!
アザミ 「!!!!」
ハヤト 「!?」
その言葉を聞いたアザミは一瞬驚きの表情を浮かべたかと思うとすぐさま泣き顔へと変わり、香織を支えていた手をスッと離すと再びどこかへ飛んで行ってしまった。その途端、再び香織の身体が川底へと物凄い力で引き寄せられた!!
一同 「うわっつ!!」
そして一同はその勢いに耐えきれず、ついに香織は川底めがけて転落してしまうのだった!!
つづく!!